35cmの音
俺は咲那が俺宛に送ってくれた
日記をいつも読み返していた。

18歳の誕生日の日記、

“ばっかじゃないの!”
って言葉が咲那らしくて、
可笑しくて嬉しくなった。

あの日、ドアの隙間から見えた咲那は
とても小さくて抱き締めたくなった。
それに、知らない人には相変わらず
人見知りな態度をとる所も可愛いかった。

あれから一度も会ってない
連絡すらとれなくなっていた。

咲那が今何処で何をしてるのか、
大学に受かったのかさえ知らない。

マキさんたちに聞くのもご法度だから

何度かけても繋がることすらない
君の番号を眺めては思い出に浸る。

それでも、この日本のどこかで
元気に過ごしてると想うだけで

俺はがんばれた。



「笑っててよ頼むから」




俺は一人、

空を見上げて呟いた。
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