ちよ先輩のてのひらの上。


「……どうして、ですか?」


私の声に振り返った先輩の髪が、そよそよと揺れた。

心地よい風が、続いて私へ、爽やかに吹いてくる。


「……どうしてだと思う?」


そう言った先輩の笑顔は、ちょっと口を斜めに結んだ、……イジワルなものだった。

……そんなこと、言われたって……。
わかんないよ。


ちよ先輩は、一瞬、私の後ろに視線を走らせてから、もう一度わたしを見た。


「ほら、おいで」

「……」

「バス、来ちゃうよ」

「……はい」


私は気を取り直して、先輩の隣へと並んだ。


……どうして、なんて。
ちよ先輩の考えていることは、私にはわかりっこないけど……。

優しくしてくれるのは、……私が、お兄ちゃんの妹だからという理由じゃなかったらいいな、と思う。

……その綺麗な瞳に映り込んでいる私が、『結城そらの妹』ではなく、ちゃんと『結城ひなた』で、ありますように。

< 41 / 225 >

この作品をシェア

pagetop