甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

「悠の母の美和子です。主人も私も会えるのを楽しみにしていたの。さぁ、どうぞあがって」
「お邪魔します」

母がついでとばかりに「悠もおかえり」というのに苦笑しながら靴を脱いだ。

通された客間のソファにはすでに父が座っており、そこでも遥は同じように挨拶をすると、悩みに悩んでようやく決めた手土産を袋から出して「お好きだと伺ったので」と両親の好物である和菓子を母に差し出す。

「まぁ、ありがとう。私も主人もここの和菓子には目が無いの」
「よかったです。色んな種類があって迷ってしまったんですが、うさぎのお月見の錦玉羹がとても可愛くて」

初めは緊張した面持ちだったものの、穏やかで話好きな母につられるように自然に話し出す。
年齢や出会いのきっかけなど少しずつ会話が進むに連れ、遥にも笑顔が戻ってきた。

「遥さんは中央健診センターで働いているんだったね」
「はい。事務のアルバイトで微力ですが、色々勉強しながら健診のお手伝いをさせてもらっています」
「悠からはもちろん、熊澤先生からも評判は聞いてるよ。気が利いて可愛い子がいるとね」
「そんな…。もう、クマ先生、オーバーに言うんです。…ね?」

縋るように上目遣いで同意を求めてくる遥が可愛くて、つい助け舟を出さずに父の話に同意してしまった。

「オーバーじゃないよ。一緒に健診に入った医療スタッフはみんな遥の働きぶりに感謝してるし、誰からも好かれてたよ」

熊澤先生の代理で入った短い現場でもそのことを感じられたし、遥の同僚である現場責任者だった中原さんに言わせれば、遥は『愛されキャラ』らしい。

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