甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

「す、すみません!私、なにを…」

人見知りのくせに沈黙が苦手で、つい緊張するとぺらぺら話してしまうのは私の悪い癖だ。

居たたまれずに手にしていた箸をそっとトレーに置くと、「納得したよ」と優しい声が耳に届く。

「さっき瀬尾さんが早見さんを説得してた時、健診の意義を説いて、健康を守るのが仕事だと言い切ってた」
「…すみません、ほんと、偉そうに…」
「どうして謝るの。褒めてるんだよ」
「え?」

会場での早見さんとのやり取りも、食事中に暗い話をしてしまった今も、褒めてもらう要素なんて何一つない。

「ちゃんとこの仕事に信念を持って働いているのが伝わってくる。だから職歴が長いのかと思ったんだけど、お母さんのことがあったからなんだね」
「…はい」
「熊澤先生からも聞いていたんだ。よく気の付く子がいるって」
「クマ先生?」

クマ先生に何を聞いたんだろう。不思議に思って首を傾げると、九条先生はクスッと笑った。

「そうクマ先生。ここの人達くらいだよ。あの熊澤先生をそう呼べるなんて」
「え?」
「俺にとったら、それは怖い大先輩だからね」

< 27 / 188 >

この作品をシェア

pagetop