甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

「いいよ、俺が誘ったんだし。年下の女の子にお金出させるなんて出来ないよ」
「だって、何か申し訳なくて」
「大丈夫。それなりに稼いでるから」

茶化すように言うのは、きっと九条先生の優しさ。
それが分かるから、あまりしつこく払うというのも憚られる。私は観念してぺこりと頭を下げた。

「ありがとうございます。ごちそうさまでした」
「お母さんを亡くして1人で頑張ってるんだろう?たまにはこうやって誰かに甘えたっていいんだよ」

優しげに細めた目で私を見つめながら、大きな手が頭にぽんぽんと乗せられる。

誰かに甘えたっていい。その言葉がじゅわっと心に沁み入って、ぽかぽかと温かい気持ちになる。

母が入院して亡くなってからずっと張り詰めてきた気持ちが、するすると溶けていくような感覚に動揺する。

目の奥がツンとして、慌てて下唇を噛んだ。

「瀬尾さん?」
「いえ、ありがとうございます。でも、私も母の入院中、それなりに稼いだんですよ」

もちろんお医者さんの九条先生に遠く及ばないことはわかりきっているけど、湿っぽくなってしまわないように努めて明るく話した。

「『レスピナード』ってお店知ってますか?」
「…いや」
「結構な時給に釣られて働いてたんですけど、料理やドリンクは異常に高いし、服装は恥ずかしいし、お客様はコアな男性ばかりで」

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