△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~
22話「光と裏側」


   22話「光と裏側」


 

  △△△



 「送っちゃった………。でも、後悔はしてない」


 虹雫はPC画面に表示されたメール送信画面を見つめた。
 盗作についての問い合わせをしてから、出版社からの連絡はなかった。きっといたずらメールだと思われたのだろう。それからも、何度かメールをしてみたが、多くなればなるほど、信じてもらえなくなるような気がして、一度止めた。
 そして、ずっと考えてきた事はやろうと決心をした。それを毎晩夜遅くまでこなしていた。どんなに仕事で疲れていても、帰ってきてすぐにPCの電源を入れる。そして、サンドイッチやおにぎりなどを齧りながら、そして時にはご飯を食べるのを忘れてキーボードを叩き続けた。

 虹雫はまた小説を執筆し始めた。
 盗作事件があり、怖い思いをした後。虹雫は本を読むのさえ嫌になった。けれど、ゆっくりと気持ちが抑えられるようになり読書も出来るようになった。それは、3人と忘れると約束したからだと、虹雫は思っていた。宮と剣杜に忘れると言ったのに、いつまでも怖がっていてはだめだ。だから、2人の前でも本の話をしたり、読書をするようになっていった。それを2人は喜んでくれたし、今まで以上に話を聞いてくれるようになっていた。

 けれど、小説を書くことは出来なくなってしまった。
 小説を書くのは、自己満足で始めたつもりだった。けれど、小説を投稿するようになって、いろいろな人から感想を聞いたり、自分の物語の事で話し合うことが楽しくなっていたのだ。
 けれど、投稿サイトでは物語は全て削除し、登録さえ抹消してしまった。もう、以前のようには出来ないのだ。違う名前で活動を始めようとも思ったけれど、あの人にバレてしまったら。そう思うと一歩踏み出すことが出来なかったのだ。


< 108 / 202 >

この作品をシェア

pagetop