△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~




 宮は頭が良かった。
 それは自分自身でもわかっていたし、別に自慢で言っていることでもない。
 努力もあっただろうが、ほとんど生まれつきもっていたものだった。一度覚えたものは、すぐに忘れる事はなかったし、本に書いてあることは大体が1回で理解出来た。説明書のように、読んでしまえば答えがわかる勉強や試験は、簡単であるし当たり前に出来てしまう。
 それを普通に出来ないのが「普通の人間」なのだと、宮は小学生になった時に初めてわかった。
 自分は変わり者なのだ、と。

 周りの大人は「天才だ」と宮をちやほやし、大人になった時のためにと何かと親しくなろうと寄ってくる者が多かった。同級生も「かっこいい」「将来はお医者様かな」と、勝手な妄想を膨らませ王子様に迎えに来てもらおうとうする女たちが周りに集まってくるようになり、宮はうんざりしていた。

 けれど、そんな一部分しか見ない周囲とは違い、宮自身を見てくれる特別な存在が、宮の傍に居た。
 それが幼馴染である剣杜と虹雫だった。2人が居たから宮は自分が殻に閉じこもる事もなく、他人に強く当たる事もなかったのだと思っていた。普通に学生生活を送れたのは幼馴染が居てくれてこそだった。


 中学生になると進路や将来について考える事が多くなっていく。
 その頃、宮は大きく躓いていた。
 「将来の夢はなんですか」と、聞かれても全く想像できなかったし、特別やりたい事もなかった。
 皆はゲームやアニメ、部活やアイドルなど好きな趣味もあるようだったが、宮にはなかった。虹雫は小説、剣杜はファッションやアートに興味を持っていた。どうして1つの事に夢中になれるのか。宮は、部活動を必死にこなす学生たちを見つめながら、いつも不思議でしかたがない思いだった。それをどうやって見つけたのか、そしてどうして飽きないのか。理解出来なかった。


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