△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~



 剣杜の言葉に驚きながらも誘いを断る事はない。
 澁澤は、椛が気になって仕方なかったはずなのだ。澁澤から連絡がきてもずっと断っていた。この日のために。
 ようやく会えた狙っていた相手が、ホテルに誘ってきたのだから、嬉しさもあるが本心を探っているようだった。剣杜は少し恥ずかしそうに視線を逸らして返事をする。これで、ホテルに誘ったのが話をするためだとは思わないだろう。


 「ありがとう。じゃあ、さっそく行こうか」


 すぐにでも2人きりになりたかったのか、澁澤は立ち上がり剣杜が持っていた部屋の鍵を取った。
 椛として「はい」と返事をして、澁澤の後を追った。

 2人きりになったら、この男を殴り倒してしまいたかった。
 演技でも笑顔を見せるのが嫌で仕方がなかったが、これでおしまいだと思えれば、彼女の苦しみを思い返せば、我慢出来た。

 剣杜が澁澤をホテルに誘ったのには、もちろん理由がある。
 昨日の夜中に、宮から連絡があったのだ。仕事から帰ってきたばかりで疲れていたが、宮の話を聞いた瞬間に疲れなど忘れ、怒りが込み上げてきた。

 澁澤が虹雫に接触し、また脅された。
 その話を聞いて、もう待っていられない。これ以上、虹雫を傷つけさせるわけにはいけない。
 その考えは、宮と剣杜、2人共同じだった。

 以前から、澁澤と会う事になった時のために、宮から作戦は聞かされていた。
 それは簡単なようでバレたらおしまいという綱渡りな作戦だった。


< 166 / 202 >

この作品をシェア

pagetop