△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~



 仕事の些細な出来事。
 虹雫にとっては問題でも彼らにとっては、そんなに大きな出来事には思えないはずだ。きっとお母さんが恋しくなったのか、絵本の内容が怖かったのか。そんな類の大したことはない出来事だと思ってもいいはずだ。けれど、宮と剣杜は真剣に聞いてくれる。そういう所がとても信頼できるし、大好きなのだ。


 「………うん。終わった後に声を掛けてみたんだけど。いつも来ているボランティアさんに「次は新幹線の話を読もうね」って約束をしていたみたいで。私が選んだ本にはそれがなかったから、悲しかったみたい。その子のお母さんも今日はお休みだから仕方がないって話したのに、すみませんって謝られて。お休みしてしまう事ってあると思うから、次からは引き継ぎした方がいいかなって思って。そうすれば、楽しみにしていた絵本も読めるだろうなって……」




 クレームでもない、本当に小さなトラブル。
 子どもの我儘と言ってしまえばいいのかもしれないが、約束を守らなかったのは大人の都合なのだ。しっかりと謝って対策を立てなければ、と読み聞かせ会が終わった後も考えていた。そして、他の職員に相談するべきか迷っているうちに勤務時間が終わり、考え事をしていたせいで、今日終わらせる予定だったものが終わらなかったのだ。そのため、食事会にも遅れてしまった。
 こんな事で申し訳ないな。そう思いつつも、相談してしまうのだ。


 「なんだ。もう解決策は出てるんじゃん!」
 「え……」
 「引継ぎをしればいいだけだろう。やってみたらいんじゃないのか。読んだ本と、次の読む予定の本をノートにでも書いておけば、もしもの時に対応する人も安心だろ」
 「そうだよね……」
 「元幼稚園の先生なら、きっと理解してくれるだろう」
 「う、うん」
 「よし!解決なー。デザートくるんだろう?食べようぜ」
 「そうだな。虹雫も好きだろう。苺のシャーベット」
 「うん。好き……」




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