溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜

「え…」

「だから
 貴方の傍から離れます」

私なりに精一杯
必死だけど伝えたんだ。

片思いに終止符をつける決意を。

「由凪さんが…俺を…?
 それに、離れるって…」

驚いている然さんは
たぶん私の気持ちは知らなかったんだと思う。

そうだよね。
私自身だって気付かなった感情だもん。

「実家に帰ろうと思うの。
 この歳だし、両親のためにもお見合いしようかなってね」

これは本当の事。
30歳過ぎて独り見で彼氏もいないなんて
結婚の見込みが微塵もないから。
いいかげん現実を考えないといけない。

「お見合いって…」

「…うん。
 だから、退職…させてもらうね」

今度は私が彼に頭を下げた。
これは”男と女”じゃなくて
”社長と社員”として。

「そう…なんだね」

瞬きを忘れ
面食らって愕然としている然さん。
それくらいの衝撃を受けるって事は
私の口から
まさかそんな話をされるとは思っていなかったんだね。

「短い期間だったので
 ほとんど役に立てなかったんだけどね。
 だけど、とても楽しい毎日でした」
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