待ち人、音信なし
声が聴きたいと思ったのに。
私が聴きたかった声は。
「私の元彼、戦死したんです。三年前に」
パンプスの爪先だけ引っ掛けて、ぷらぷらと揺らす。ノアさんからの返事は無いので、ただの独り言だ。
「遺体も回収できなくて、遺品もなし。私の元に残ったのは、何でもない日に彼が残した留守電だけです」
それを今も、死ぬほど、大事にしていて。
「……三年前、私も一緒に死ねば良かったと思う日が、今も度々あります」
留守電を聴かないと、声も思い出せなくなってしまうくらいなら。
ノアさんの方を見ると、ノアさんも私を見ていた。
菫色の瞳が宝石みたいに綺麗だった。