皎天よりあの子は遥か


言いたいことはよくわかる。片や万年首席の学級委員長。黒くてさらさらの長い髪にマニュアル通りの制服の着こなし。化粧っけはないのにいつも笑顔だからか可愛らしい。みんなから頼られる人気者の隣にいるのが問題ばかりの金髪頭、とか、そりゃ心配になるよね。

けっしてみよが呼び出して裏でシメたりするわけじゃないよ。なぜか勝手にすり寄ってくるだけ。なんなんだろう。優等生って、はみ出し者の面倒見て点数稼ぎしたいのかな。



「お休みしてる時は何してたの?」


ふつうに話しかけてくる。


「喧嘩とセックス」


めんどくさいからこれ聞いてこわがって。


「元気でいたならよかった。いいなあ」


くすくすと、小鳥が鳴くように笑う。さっきの貼り付けた笑みとは違うそれに居心地がわるくなる。


「いいなあって...バカにしてんの?」

「え、してないよ。私は、人と言い合いしたり誰かと身体を重ねることもしたことないから、いいなあって思っただけ」


喧嘩はともかく、高校2年で未経験なことをさらりと言って他人をうらやましがるってどうなの。素直や正直の類いに入れていいのかわからない。



みよのそれは、誰かと身体を重ねる、なんて綺麗な表現をしてもらえるものじゃない。

言い合いなんかじゃなく殴り合いや騙し合い罵り合いに近い、うらやましがられるなんてこっちとしては心外だ。



「優等生らしいね」


まあでも、学校の期待どおりの女の子。みよとは正反対の場所で生きてるってかんじ。だから嫌味で言ったつもりだった。


「結果的にみんなからはそう思われてるんだろうなあってわかってるけど、私はただ、学校が好きで、勉強して知りたいことを知れることが好きなだけだよ」

「……」


やっぱり、みよとは全然違う。学校を好きだと思ったことはないし、勉強して何かを知っても生まれた頃からみよに備わるものは何も変わらないって思う。

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