烏山
「やっぱ自然はいいなー」
そういいながら(うみ)は車から降りた。夏休み広島のおばあちゃんの家に遊びに来たのだ。
「海ーお母さん達は荷物を家に運ぶから自由に散歩してきていいわよ」
「ハーイ!」
とは言ったが始めてくる場所なのでどこにいこうか迷った。周りは山ばかりで公園などは無い。
「どーしよ……」
その時後ろからカラスが飛び立った。「ついてこい」カラスがそう言っているようだった。その様子に探究心を抱いた海は、
「まてーーー!!!」
とカラスを追いかけた。夢中でカラスを追いかけていた海は見知らぬ山の入口まで来てしまった。
「あれ?ここ何処だろ?」
先程追いかけていたカラスは、どこかに行ってしまった。
「まぁいいや…とりあえず進んでみよう」
海はとてもポジティブだった。しばらく進むと道にロープが張ってありロープには、
「私たちは何も知りません…」
と、書いてあるポスターが貼られていた。
「へんなのー何も知らないってなんのことよ?」
笑いながらそう呟いた。
ガサッ…ガサッガサッ
何かが動いた音がした。
「えっ…なんの音?」
張り紙に向けていた目をゆっくり森の奥の方へ動かした。
そこに居たのは………女の子だった年は同じくらいで綺麗な顔をしていたけど着ている服はかなり汚れていてボロボロだった。
「あっ……」
女の子と目が合ってしまった。綺麗な目をしていた。輝いていて空の色を反射して青く光っていた。女の子は、これ以上黙っているのが耐えられなかったのか後ろを向いて森の奥の方へ走って行ってしまった。
「行っちゃた……………」
海は、追いかけようとしたがもう夕暮れだったので仕方なく帰ることにした。『あの子は、あんなとこで何をやってたんだろ? 』そんなことを考えながら海はおばあちゃんの家に向かった。改めて広島の町を見てみるとコンビニなどは全く無くて周りは、のどかな田園風景が広がっていた。都会っ子なら退屈に感じるかもしれない。いや感じるだろう。だけど海はどっちかというと田舎の方が好きだった。田舎には都会に無い自然と開放感がある。海にはこの感覚が気持ちよかった。友達を連れてきたらのなんてゆーかな?、退屈ってゆーかなー?色々考えたり妄想したりしているとあっという間に家に着いた。
「ただいまーー!!」
「おかえり海。そういえばあんた遊びに行ってたからこっち来てからおばあちゃんに会った事ないわよね。挨拶してきなさい。」
いきなり言ってくるもんでビックリして海は
「えーーいきなり言わないでよ!」
と言ってしまった。本当はおばあちゃんに会うのを誰よりも楽しみにしていた。だが、山で出会った女の子の印象が強すぎて思いっきり忘れていたのだ。
「おばあちゃんってどんな人??」
「優しい人よ、戦争で親を亡くしてしまって塞ぎ込んでいた時期もあったってお父さんが、言って たけど今はとっても元気よ。」
海はお母さんの言っていることが、信じれなかった。ほかの親戚の家に行った時お母さんは、子供好きな人と言っていたけど実際は、子供嫌いでわがままな人だった。帰ったあと全然違ったと言ったら、「機嫌が悪かったのかもしれないわ」っと言ったがその言葉は嘘にしか聞こえなかった。
「じゃあ、挨拶してくるよ。今どこにいるの?」
「居間にいると思うわ」
海は少し緊張しながら今に向かった。あの子供嫌いな親戚のような人だったらこの夏休み楽しめないそんなことは絶対に嫌だ。いい人でありますように!そう願いながら海は今に繋がる扉を開けた。
「し、失礼します…」
忘れ物をした時担任に言いに行くため職員室の扉を開けたような気分だった。
「あら!もしかして海ちゃん?」
その声を聞いて海は、ホットした。明らかに歓迎してくれている。
「ハイ!海です!」
心配だったことが消し飛んだ海は、もうノリに任せて返事をした。
「あら、そんなかしこまらなくていいのよ。会うのは初めてねぇ。夏休みの間よろしくね。」
「うん!よろしくねおばあちゃん!!」
まるで友達と話しているかのようにスルスル話が進んでいく。
「あ!そうそう学校の話を聞かせてくれない?美子さんからも聞いているけどやっぱり海ちゃんから聞きたいのよ。いいかしら?」
「うん!もちろん!!えっとね…友達に美香ちゃんって子がいてね。すっごく運動神経がいいの!あと、瑠璃ちゃんって子が…………」
海の話は、1時間弱続いた。きずけば学年全員の話をし終わっていた。
「あっ!おばあちゃんごめんなさい。時間沢山過ぎちゃった。」
「いいのよ。海ちゃんの話とても楽しかったわ。」
海は、ほっとしておばあちゃんの器の広さに感心した。
「海ーー!!弘子さーーーん!ご飯出来ましたよ!!」
「あら、美子さんは、ご飯を作るのが早いわねぇ。海ちゃん。肩貸してもらっていいかしら?」
海は、うなずきながらおばあちゃんに肩を貸した。おばあちゃんの体は予想以上に軽く移動はとても楽だった。方を貸した時一瞬違和感を覚えたくらいだ。
リビングの机には色とりどりの美味しそうな料理が並んでいた。母にしてはかなり奮発したようだ。
「「「いただきます」」」
「美味しいわー美子さんの料理」
「そんなことないですよー」
おしゃべりに花を咲かせる母たちを横目に山で出会った女の子のことをまた考えていた。やはり人間気になったことは、追求したくなるものだ。
ご飯を食べ終わってから海は、与えられた自室へ移動した。布団にダイブする。洗剤と僅かな線香の香りを味わいながら海は、スマホで、【⠀広島、山、人住んでる】と調べていた。検索画面に現れたのは、【⠀検索した言葉は、見つかりませんでした。】という無機質な文字だった。色々な掲示板なども見た。でも女の子のにまつわる情報はこれっぽっちも無かった。その結果に海は、眉をひそめた。インターネットの力を駆使しても出てこない。諦めようとしたがやっぱり諦めきれなかった。


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