最低で最高のホワイトデーを
私は、ある時から私自身を嫌いになった。どうして他の女の子と同じじゃないのか、自分の体を恨んだ。でも、そんなことを忘れられる最高の瞬間が私にはある。

ライトが眩しいくらいに輝くスタジオ、多くの人が見つめる中、私は腰に手を当てたり髪に触れたりする。そのたびにカシャリとシャッター音が響いた。

「希ちゃん、その表情いいね〜!」

素人の私にはわからないけど、めちゃくちゃ高そうな撮影用カメラで撮影しながらカメラマンさんが言う。撮影を見学しているメイク係さんたちも、「さすが希ちゃん」とボウッと見惚れた顔をこちらに向けていた。今、このスタジオは私だけの世界だ。誰もが私に夢中で、私は暴力的なまでに美しくなれる。

私の名前は甘露寺希(かんろじのぞみ)。十九歳。大学に通いながら読者モデルとして、十代と二十代の女の子に人気の雑誌で活躍させてもらっている。自分で言うのもアレだけど、結構人気な読者モデル。

「撮影は以上です。お疲れ様」
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