隣の部屋の新人くん
冷たい地面の上。
目が合う。

「やっば、俺もかなり酔ってます」

そう言って白い歯を見せて笑う。

「どうしよう、全然歩けてないね、私」

私も笑う。
なんだろう。
なぜか久しぶりに楽しい、今。

「えー、もう今日ここに野宿ですか」
「やばい、まじで寝そう。見て、見て、ほんと目が開かないの」

そう言って坂口くんの腕を引く。
不意にお互いの顔が近づく。
間近で見る坂口くんの顔。
まだ社会の色に染まってない人間ってこんなにかわいいんだ、と思う。

「そういえば岡本さん、付き合ってる人いるんですよね」

突然坂口くんの口から佳弥の存在が飛び出した。

「結婚するんじゃないかって課長が」と続ける。

「たぶんしないよ」

急に脳内の高度が下がった。
今の今まで楽しかったのに。
坂口くんが何も言わずに私を見る。

「あの人、する気ないよ、多分」

そう言う私の声は、もう春だというのに白く吐き出される息に乗って、藍色の夜の空に吸い込まれていくようだった。

先週佳弥に連絡したのに、一週間も返信がない。

「立てますか」

坂口くんがそう言って私の両手を上に引っ張る。

「大丈夫」

私は、坂口くんに強く引っ張られて立ち上がった。

結局、すぐタイミング良くタクシーが通りかかった。
私たちはそれに乗って帰った。
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