隣の部屋の新人くん
「好きですよ、これ」

フォロー気味に言うと、彼の眼が輝いた。

「めっちゃ美味いですよね!俺も好きなんです、これ!」

軽く日に焼けた肌に、真っ白く並ぶ歯が眩しい。
そっか、京都の大学からこっちに出てきたんだ。
若い。

私は愛想笑いを浮かべて「私、岡本です」と答えた。

「おかもとさん、おかもとさん」

彼は唱えるように言う。
案外覚えたって、隣の部屋の住民とは接点ないよ、と教えてあげたい。

「さかぐちさんですね、よろしくお願いします。」

先に私が会話を締めようとする。

「はい、坂口諒(りょう)です、よろしくお願いしまーす」

彼は丁寧にフルネームで名乗った。
その言い方に、あれ、と心が少し引っかかったものの、私は紙袋を受け取る。

お互い軽く会釈をすると、ドアを閉めた。
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