記憶ゲーム
☆☆☆

翌日の朝、連絡網で啓治が行方不明になったことが伝えられていた。


「ちょっと愛。あなたの学校どうなってるの?」


朝一で電話に出たお母さんが眉間にシワを寄せて聞いてくる。


すでに制服姿の僕は「わからないよ」と、力ない返事をするしかなかった。


本当のことなんて言えるはずがない。


僕が巻き込んだせいで、2人も誘拐されてしまっただなんて……。


「じゃ、もう行くから」


朝食も食べずに玄関へ向かう。


とても食欲なんてなかった。


今日も天気は最悪で、じめじめしているくせに雨は降らないみたいだ。


「ちょっと待ちなさい」


お母さんが僕の右手を掴んで引き止めた。


振り返ると真剣な表情のお母さんと視線がぶつかる。


その真剣さに僕は一瞬たじろいだ。


お母さんがすべてを見透かしているように見えたからだ。


僕は咄嗟に視線をそらせてしまった。


「今日は学校を休みなさい」
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