【完】嘘から始まる初恋ウェディング

嫌だ。ほっくんの事は嫌いじゃない。 気心も知れているけれど、私の気持ちはほっくんに向いていない。 そんな状態で結婚の事なんて考えられない。

問いかけに戸惑い、白鳥さんの方をちらりと向くと、彼は無表情のまま椅子から立ち上がった。

「家族の話ですから、僕はお邪魔ですね。 先に休ませて貰います」

「ああ、白鳥くん…付き合わせる形になってすまないな。」

「いえ、では僕は…
阿久津さんも失礼します。」

白鳥さんは私が困っているといつだって助けてくれた。 けれどこちらを一切見ようとはせずに立ち上がってリビングを出て行ってしまった。

その後も両親やほっくんは盛り上がり、何故かお式の日取りの話まで出てしまう。

終始レナちゃんだけが険悪な表情をしていて、私は何も言えずにその空間で一人ぽつりと取り残される形になってしまう。


婚約者なんていらないの。 恋愛や結婚。 自分の好きな人は、自分で決めたい。
少しは自己主張出来るようになったかと思えば、いつだって肝心な所で自分の気持ちを言えない。

久しぶりに会った幼き頃から知っている幼馴染を恋愛対象になんか見れない。 そもそも私には好きな人がいる。

そう父に伝える勇気がこの時、私にあったのならば。

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