乙女チック同盟~私と学園の王子様のヒミツの関係~
「悪い、悪い。俺さ、こう見えてもすぐ泣いちゃうから、友達とは絶対に泣ける映画は一緒に見にいけないんだよな」

 映画を見終わった後、近所のカフェでいちごパフェを食べながら八乙女くんが教えてくれる。

「そうなんだ」

「でも若菜さんとだったら趣味が合うし、今度から若菜さんのこと誘おーっと」

 ニコリと笑う八乙女くん。

 何だか嬉しいな。そんな風に思ってくれるだなんて。

「そ、そうだね。私でよければ、またいつでも映画に付き合うよ。だって私たち、乙女チック同盟じゃない」

「本当? こういう可愛いお店も、男同士だと来れないし、じゃあ、お言葉に甘えてまた若菜さんのこと誘わせてもらいます」

 八乙女くんが店内を見回す。

 ここ「カフェ・ローズガーデン」はバラがテーマのオシャレなカフェ。

 店内のあちこちにバラの花が飾られてて、テーブルクロスやグラス、窓にはめ込まれたステンドグラスにもバラの模様があしらわれており、すごくロマンチック。

 だけど確かに、男子だけで来るのには向いてないかも。

「俺、行きたいカフェとか雑貨屋いっぱいあるんだよね」

 嬉しそうに笑う八乙女くん。

 ……しまつた。

 勢いで返事をしちゃったけど――ひょっとしてこれって、デートの誘い?

 ……いやいや、これはただの同盟活動。私たちは同士なんだから、そういう関係じゃないっ!

 自分によく言いきかせる。

 八乙女くんが好きなのは、可愛いものや乙女チックなものであって、私じゃない。

 だってどう考えたって、王子様の八乙女くんと私じゃ釣り合わないんだから。


 勘違いしちゃダメだ。


 

 
< 20 / 88 >

この作品をシェア

pagetop