棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目
ステージ袖の壁に、三角座りをしていると。
会場の時間になって
ステージ前の広場に
ファンの子達が入ってきた。
僕も、そろそろ準備に戻らなきゃ。
わかってはいるのに、
心と連動した体は正直。
ファンから見えない、ステージ袖の壁にもたれ
立ち上がろうとさえしない、頑固者。
その時
頭の上から、生意気な声が。
「天音が、弱ってるじゃん」
なんで、今現れるかなぁ。
「綺月君、邪魔だからあっち行ってて」
「俺が、こんなチャンスを逃すかよ」
「は?」
「今まで天音に、さんざんいじられて。
『へたれアイドル』って、ボロクソに罵られてさ」
「……」
「抱えきれないほどのでっかい借り、
今返してやるよ!」
ま、覚悟はしていたけどね。
心美ちゃんと綺月君を
くっつけるためとはいえ
綺月君の心に
ブスブス棘を刺し続けたのは
紛れもなく、悪魔モードの僕だし。