カタブツ竜王の過保護な求婚

「変な見栄を張らず、さっさと告白してしまえばどうですか? はっきり言わせてもらえば、今の殿下は格好悪いですし、情けないですね。あと、私のお給金をもっと上げるべきです」

「………」


 それきり、執務室には沈黙が落ちた。さらさらと筆を滑らすかすかな音と、書類をめくる乾いた音が時折聞こえるだけ。
 半刻ほどが過ぎ、ようやくカインが口を開いた。


「フィル、私はお前が嫌いだ」

「存じております」

「だが、頼りにしている」

「それも存じております」

「では、あとを頼む」

「……今回だけですよ」


 返事も確かめずに立ち上がってドアへと向かうカインに、フィルは肩をすくめて答えた。そして、少々乱暴に閉まったドアを見てほくそ笑む。
 これでおそらく明日には、また新しい噂が広まるだろうと。


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