カタブツ竜王の過保護な求婚
ルルベラの存在を除けば自由に育ったレイナにとって、このひと月はまるで拷問のような日々だった。
だがこれを乗り切れば、きっと王太子殿下との結婚生活だって楽園にいるように感じられるに違いないと、自分を励まし耐え抜いた。
そしてもうすぐ、この血と涙と汗を流した日々ともお別れできるのだ。
アデル夫人とは婚礼を見届ければフロメシアに戻ることになっている。
まさか、このような形で婚礼の日が待ち遠しく思えるとは予想だにしていなかったが。
ため息一つでみっともないと鞭で打たれることに不満はあるが、ここは逆らわないほうが得策だろうと、レイナはアデル夫人のように背筋をぴんと伸ばして座り直した。
(あと少し、あと少しの我慢だもの)
最近ではすっかりおなじみになった呪文を心の中で唱える。
レイナの隣では、乳母のノーラがぎゅっと唇をかみしめていた。
その向かい――アデル夫人の隣に座る侍女のアンヌもまた目を伏せ口を挟むのを堪えているようだった。
二人ともアデル夫人の教育方針には反対なのだ。
だが身分差が異を唱えることを許さず、こうして我慢せざるを得ないのである。
アデル夫人はかなり苛立ちが募っているらしい。