カタブツ竜王の過保護な求婚

 普段なら「返事はもっとはっきりと」と、たしなめられるはずなのだが、夫人は気付いた様子がない。珍しく何か言いあぐねているようだ。
 皆を待たせ過ぎているのではないだろうかとレイナが心配を始めた頃、ようやく夫人は続きを話し始めた。


「その……寝所でのことはすべて殿方に――王太子殿下にお任せすれば良いのですが……獣人との交わりなど私にはわかりません。ですがまあ、人間には及ばずとも似ているのだとすれば、我慢していればいずれ終わるでしょう。痛みに関してはわかりかねますが、耐えられるようお祈りしておりますわ」


 夫人は早口にまくし立てていたが、言いたいことは何となく伝わった。
 どうやら宮殿を出発する前日に、フロメシア王宮の古参の侍女から教えられたことと同じらしい。
 
 いつもはレイナを前にすると無表情になる侍女たちも、その時ばかりはなんだか落ち着かず、「獣人についてはわからないので」と何度も繰り返し、曖昧な言葉ばかりだった。
 そのため、今ひとつ理解できていないレイナには、謎が深まっていくだけ。さらに知らされた新事実。

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