カタブツ竜王の過保護な求婚

 慣れない多くの行事を一日でこなしたからだろう。
 式が終わると王城内へと連れられ、最上階の陽の当たるバルコニーへと導かれた。

 特別に開放された王城前広場に集まった民衆から、婚姻の祝賀を盛大に受けるためだった。
 午後には貴族たちを招いた披露宴が催され、レイナは必死に笑顔を張りつけていた。
誰が誰だかさっぱり覚えられないまま、とにかく失礼のないよう尻尾などに目線を向けず気を使って。
 ちなみに、国王夫妻への拝謁は数日前に終わらせている。

 ジナフ王はとても厳めしい顔でむっつりとしていたが、それをカインの母であるクレア王妃の穏やかな微笑みで、その場の雰囲気を和らげてくれていた。
 やはりジナフ王が何の獣人なのかはさっぱりわからなかったが、王妃は兎の獣人であることが長い耳からわかった。

 異種である獣人の夫婦では、生まれる子は男の子であれば父親の種を、女の子であれば母親の種を受け継ぐらしい。
 だからこそ、人間であるレイナと王太子との結婚が認められたのだ。

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