カタブツ竜王の過保護な求婚


 春霞にけむる早朝の鍛練場。
 そこに、まだあどけない顔の少年が意気揚々と入って来た。
 おろしたての騎士見習いの衣服に身を包み、栗色の髪を束ねた新米の登場は、他の騎士見習いたちの気を引いた。

 臭いで人間だとわかるからだ。
 だが彼らもよそ見をしている時間はなく、正騎士たちが起き出す前のわずかな間に少しでも鍛練をと、準備運動を始める。
 新米の少年もすぐに加わり、思いのほか動きがいいことに獣人の少年たちも刺激され、いつも以上に鍛練に熱が入った。


「新入り! その調子だ!」

「ありがとうございます!」


 当番で指導する騎士の一人の声に、新入りの少年――レイナは意気込んで答えた。
 その様子をラベロは堂々と、だが内心はひやひやで見守る。
 幸い、ラベロの心配をよそに鍛練は順調に進み、模擬剣での打ち合いが始まった。

 これが終われば、見習いたちは一度隊舎に戻り、正騎士たちの世話をする。
 レイナが怪我をすることも見習いたちに正体がばれることもなく、無事に乗り切れそうだと、ラベロがわずかに安堵したのもつかの間、鍛練場の空気がざわりと揺れた。


「殿下、おはようございます」


 指導騎士たちがさっと威儀を正して立礼すると、見習いたちも慌てて倣った。もちろん、レイナも。


「かまわない、続けてくれ」


 騎士たちに驚いた様子がないことから、王太子が見習いたちの鍛錬に顔を出すのはそう珍しいことではないらしい。

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