カタブツ竜王の過保護な求婚


「最近、妃殿下はこの城にもずいぶん馴染んできていらっしゃるようですね」

「みたいだな」


 カインのそっけない返事も気にせず、フィルは続けた。


「それもこれも妃殿下の懸命な努力の賜物。貴族たちもようやく人間である妃殿下を王太子妃として受け入れ始めているようですよ」

「……そうか」


 再びそっけなく応えて、カインは西方地域からの報告書を脇に置いた。フィルが次に書状を渡す。
 当初、レイナとの婚姻には、かなりの貴族たちから反対の声があがっていた。

 ただでさえ譲歩しているにもかかわらず、この上フロメシアの王女を権限のある王太子妃に迎えるのは危険ではないかと。

 そしてさらに、カインの態度がその懸念に拍車をかけていたのだ。
 しかし、それもここ最近変わりつつある。


「まだ警戒している者もいますが、妃殿下に接した者、特に城に仕える者たちはことごとく、そのお人柄に惹かれているようですよ」

「……」


 カインは書類に集中しているふりをして何も言わなかった。
 やがて顔をしかめたカインは、読み終えた書状を少々乱雑にフィルへと返した。


「お受けされますか?」

「当然だろう。フロメシア国王の結婚式だぞ? 妹であるレイナが招待を断る理由がない」

「ですが罠だとしたら?」


 いきなり変わった話題と共に、部屋の空気が張り詰める。
 それを和らげるためか、カインは立ち上がり、窓を開けた。

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