カタブツ竜王の過保護な求婚
現在の王妃は数日前にレグルが結婚した女性であり、目の前に立つ女性――ルルベラの母親ではないのだが、この場では皆がそう呼んでいた。
それもまたレイナが居心地悪く感じた一つである。
先代国王のラクスはユストリスの挙げた条件によって譲位させられ、今は何の称号もない。
そのため元王妃も王太后の位もなく、ただの夫人でしかないのだ。
それがこのように王宮でお茶会を催し、皆に王妃と呼ばせているのは、まだレグルが女性たちの問題にまで手をつけることができていないからだろう。
レグルの性格からして母親を特別扱いするとも思えない。
本来ならレグルの妃となった女性――本当の王妃が女性たちを律するべきだが、この場にはいないことから彼女の立ち位置がわかる。
「礼儀だ何だと聞こえておりましたが、私に挨拶も謝罪もできないなんて、礼儀知らずはお前のほうよ。身分云々も聞いていて驚いたわ。ルルベラからユストリス王太子妃の座を奪っておきながら、よくも言えたわね」
「そうよ。私が知らない間に、自分がユストリス王太子妃になりたいって泣きついたのよ」
「まあ、はしたない。さすがは泥棒猫の子ね。厳しくしたつもりなのに、やっぱり同じ泥棒猫に育ってしまうなんて」
「だけど私、フロメシアが恥をかかないように、何も知らないあの子に花嫁教育してもらえるようアデル夫人にお願いしたのよ。それなのにアデル夫人に不満を言うなんて酷いわ」
元王妃のあとから現れたルルベラが自分の悲劇を嘆く。