アンチテーゼを振りかざせ

◻︎


「昨日のこと、羽村さんに聞いた。」

「…そうですか。」


ほむさん、今日もいつもと何も変わらない笑顔で、さっきもお菓子タイムだってかりんとう渡してきたりして。

昨日のことには、特に触れてこなかったのに。



「トラブルになってたって、気づかなくて申し訳ない。」

落ち着いた声が、そう真っ直ぐ私に届けられる。



「…オフィス運営委員会は、香月さんの管轄外じゃないですか。」

「リニューアルと並行して動いてくれてるのに、無関係なんて思う訳がない。」


私は今、ちゃんと笑えてるだろうか。

この人がうちの課長とあまりに正反対の考え方を口にするから、簡単に動揺してしまう。



「……保城、後悔してる?」

「え?」

「昨日そんな風に言われて。

リーフレットで枡川さん達を取り上げなければ良かったって、思ってる?」

「……。」


直球のその質問は、私から言葉を奪う。

誰かに言われて、じゃなくて
あれは確かに自分の意志で動いたこと。


だからこそ、営業部からの意見は鋭く痛みが走った。

もう自分を晒したりしないと一度は誓ったけど。


____"紬が、選べばいい。"



どうしてかこのタイミングで、心に届くあの男の声。


____私は、本当は、どうしたい?






< 81 / 203 >

この作品をシェア

pagetop