この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~

遠い日

 

 輔にはさらりと簡単に話したが、静の生い立ちは厳しいものだった。

静はロサンゼルス生まれだ。
日本人の父と日系二世の母はグラフィックデザイナーで、
結婚してデザイン事務所を立ち上げ、共同経営者として頑張っていた。

落ち着いた雰囲気の父と底抜けに明るい母。性格は真逆なのに
夫婦仲は良く、静は二人に溺愛されるひとり娘だった。

あの日までは…。

静が10歳の時、両親は仕事の打ち合わせでサンディエゴに出かける事になった。
静は友人の家に泊りがけで遊びに行き、お留守番だ。
これまでも何度かあった事なので、特に何も思わず両親を送り出した。

『いってらっしゃ~い。』

『マギーの家でお利口にしててね~。』

『うん、早く帰ってきてね~。』


大きく手を振ってバイバイしたら…最期のお別れになってしまった。
二人は、ハイウェイの事故で亡くなったのだ。

悲しくて悲しくて、何も分からず毎日泣いてばかりいた。
幼い静をどうするか、両親の友人達や仕事の関係者が相談してくれたのだろう。

ロスに住んでいる母方の親戚より、父の両親が引き取る事を強く希望した。
遥々日本から、静の祖父が弁護士を連れてロサンゼルスにやってきたのだ。

静はその時の事をよく覚えていなかった。
彼らが事務所の後始末などを済ませたらしく、気が付いた時には日本にいた。



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