この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~

縁談



 静は女子大を卒業する前には、すでに松子の私設秘書のような立場だった。
屋敷の中の事や生け花教室は殆ど任されていたので、
白河と相談して広い屋敷を効率よく管理する方法を考えたり、
内弟子達と力を併せて、年に二回開く華宵流の展示会を仕切ったりもした。

広告代理店に就職した幼馴染の浩太からは、生け花の仕事が入るようになり、
新進気鋭のフラワーアーティストとして次第に活躍するようになっていった。


静が日本へ来て10数年が経ち、育ててくれた祖父母も高齢になった。

松子は肩書だけでも東京支部長を務めるのが難しくなり
華宵流東京支部長は家元の次男の大和(やまと)に引き継がれた。

京都からやって来た御堂院大和(みどういんやまと)は、静より10歳年上で
静とは又従兄妹の関係になる。和服姿が凛々しいと評判の華道家だった。

大勢の観客を動員したイベントで大作を活けてみせたり、
車のコマーシャルに出演したりとマスコミでも活躍している人物だ。

話してみると意外に気さくな人物で、静にも優しい。
祖母は家元に反抗的だったし、静の父が伝統を嫌って家を出た事もあり、
流派の中での静の立場は微妙だ。だが、静の作品に人気が出てきたので
大和と静が二枚看板として、華宵流東京支部を支える事になっていった。


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