この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~

 やがて女の子は中学生、高校生となった。
次第に無表情になっていったが、竜平と話す時だけ少し笑顔を見せてくれた。


真っ直ぐで長い黒髪。大きな瞳。スラリとした姿態。
女の子は、少女と呼ぶよりどんどん女性らしくなっていく。

竜平は小松原邸に行くと、つい静を探してしまう。

彼の心を惹きつけたのは、その恵まれた外見より静の佇まいだった。
いつもピンと背筋を伸ばして、前を真っ直ぐに見つめている。

ある日、竜平が静を探してこっそり稽古場を覗いてみると、
静が正座して、一人で花を生けていた。

何の花を活けていたか種類は覚えていない。
彼女はすっと背筋を伸ばして、左手に花を右手にハサミを握っていた。

パシッとハサミの音がして、花は茎をほんの数センチ落とされた。
そして、剣山に刺される。

一連の動作は流れる様で、静の姿は美しく緊張感に溢れていた。
生け終わっても姿勢を正したまま、長いこと花を見つめていた。

彼女はそこに何を見ていたのだろうか。

また、違う日には庭にいる静を見つけた。

彼女は季節ごとに様々な花をつける庭木をよく見つめていた。

山吹、桜、木蓮、紫陽花、金木犀、椿…
あの日、彼女は空を見上げていたのか、枝を見つめていたのか…

答えを聞いてみたかった。








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