―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
薬剤師のような白い制服を着たウエイターが空いたカップを下げていった。
テーブルの上ががらんとした。
大きなテーブルに横並びで座る様子が不自然で目立つのか、龍道コーチの容姿が人目を引くのか、周囲の視線がときおりこちらに向けられる。

「もうこれっきりにしてね。私、ご両親をだますのいやだわ」

「そうもいかない。なんだかんだと探りを入れてくるだろうから」

「なんだかんだって?」

「今日みたいにお茶しようだの、素行調査をされるかもしれないな」

空になったカップを覗き込み、龍道コーチはさきほどのウエイターにアイスコーヒーを2つ頼んだ。

「素行調査?」

「ほかに男がいないか、とかさ」

龍道コーチがちらりと透子を見た。

「いたらどうするのよ。私、彼氏いないなんて言ってないし」

強気に出てみたが、「言ってないけど、いないよな」と断言されて、透子は龍道コーチを睨んだ。

その睨みに肯定の意を読み取った龍道コーチは「だったら」と、にっこり笑った。
< 78 / 130 >

この作品をシェア

pagetop