庵歩の優しい世界


 ポツンと中央に置かれた机。テレビラックと観葉植物がベランダのそばに置いてあるだけで、あとはピラミットよろしく段ボールの山が出来上がっていた。



「さあさあ座って、座って」



ご機嫌な幸助が段ボールの中をガサゴソ漁って座布団を敷いてくれた。


段ボールを座布団です、と出されるのかと焦ったが流石にそんなことはなかった。


ここ1ヶ月、ナツ君と幸助はよく私の家に遊びにきていたけれど、私が家に呼ばれるのは今日が初めて。



もしかしてこの人たち、殺風景な部屋にいるのが嫌で私の部屋に入り浸っていたんじゃ。




「私、今日はこれを持ってきただけなんですけど……」


私は持ってきた鍋を差し出した。


「わあ! ありがとう!」

大いに喜んでもらえて結構。

「琴吹さんも一緒に食べませんか?」

お誘いも受けてたとう。


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