庵歩の優しい世界


珠手が目を丸くさせた。

 寝てると思っていた人から返事が返ってきたから驚いたのかそれとも、風邪を引いてるのにミロを飲む人種がいることに引いているのか。



「いつもフツーにお茶とか飲んでるじゃん」


拗ねた子供みたいに口を尖らせて珠手が言う。


「ミロなんて飲んでるとこみたことないよ俺………」



珠手は眉を下げて、困ったように笑った。


「なんでそんな顔するの。だって珠手、甘いものダメでしょ? 匂いとかもダメなの知ってるから飲んでなかったの」


「そんなことしなくていいよ。気を使わなくていい。………このヘラヘラした男が庵歩の好きなもの知ってて俺が知ってないのって、なんか腹たつじゃん」


そ、そういうものなの?


「まあまあ、そうカリカリしないでくださいよ病人相手に」


 幸助が割って入ってきた。

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