【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「なんで……」

 なんで……ここにいるの……? え、どういうこと……?

 分からない。なぜ? なぜ、彼がここに……。彼はあの日、いなくなったハズなのに……。

 ……信じられない。わたしは今、夢でも見ているの?

 その目の前にいる彼の姿を見て、わたしは何も言えずに、そしてただ見つめることしか出来なかった。

「……奈都?」

 そんなわたしを見て、親友の藍那(あいな)がそう声をかけた。

「……っ、ごめん。 なんでも、ない……」

 声を震わせながら、それしか言えなかった。

「……奈都、大丈夫?」

 だけどぐっと下を向いたまま、彼の顔を見れないわたしを見て、藍那は心配そうにわたしを見つめていた。

「……大丈夫。ごめん」

 落ち着け、わたし。落ち着くのよ、わたし。……これは幻。幻覚よ、ウソなのよ。

 今目の前にいる彼は、彼ではない。別人なのよ。……顔が同じだけで、声も名前も違うの。

 彼は、わたしの知っている彼じゃない。
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