24時の鐘と俺様オオカミ
 紙に染みたインクのごとく、じわりと広がる考え。

 それを振り払うように、ぶんぶんと首を振る。


「ねえ、一樹くんは好きな人とかいるの?」


 不意に、蓮見さんはそんな言葉をこぼした。
 きっと、彼女にとっては何でもないこと。けれど私は、心臓が跳ね上がる。

 ほろり。
 スパゲッティが、フォークをすり抜け落下する。


「ああ、いるよ」


 大路君も、あわてふためく様子はなく、心なしか弾む声でそう答えた。
< 39 / 82 >

この作品をシェア

pagetop