騎士(ナイト)に チェックメイト
今まで親以外にこの話をした事がなかった。
いや、話したくもなかった。
なのにどうしてだろう。
樹くんのそのまっすぐな眼差しと率直な言葉にふと寄りかかってみたくなった。
近くに味方が欲しかった。
甘えたかった。
2本電車を見送り話を終えた。
「面白くない話でしょ。ごめんね」
自分から許可して話したにも関わらず、どんな反応をされるか怖くて顔を見れなかった。
少し笑って誤魔化し、電車のホームを覗き込み気まづさを流そうとした。
「ねぇ、今日から送り迎え俺がしていい?」
「・・・え?」
思ってもいなかった言葉に頭がついていかない。
「俺バイトとかしてないし、サッカーも部活だから夜とかないし。むしろ部活辞めるつもりだったし。」
「いやいや、そんなの大変じゃん。大丈夫だよ!またお母さんに相談してみるし」
「やだ。俺がやりたい。
とりあえず今日のバイトの送り迎えは俺ね」
「夜9時だよ?大変だよ。お家の人とかさ。」
「大丈夫。電車来たから乗るぞ」
またもや強引に決まった約束。
電車内では何も話さずお互いドアに寄りかかり移り行く見慣れた景色を眺めていた。