秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
『あなたにまで話が伝わりましたか。まったく、契約違反も甚だしい』

契約という単語に歯がみした。そんなくだらないもので茜音を縛りつけていたのかと。

「お前と話していても埒が明かない。父は?」

『ご当主さまは教授の娘さんとのご結婚を望んでおられます。立派な奥様をお迎えしたのちに、辰己家を継いでもらいたいと――』

「その話は破談になった」

『ご当主が手土産を持ってもう一度話をつけてくださるでしょう』

どうやらせっかく断った縁談の話を再度蒸し返すつもりらしい。余計なことをしてくれる。

「伝えておいてくれ。二度と自分のくだらないこだわりに俺の人生を巻き込むなと」

『でしたら、直接お顔を見てお伝えしたらいかがですか? 本日十九時にお待ちしておりま――』

「そちらの都合で勝手に話を進めるな。生憎俺は妻子持ちで忙しいんだ。二十二時に行く」

嫌味をたっぷりと言い含み電話を切ると、空に向かって盛大にため息をついた。

なにも知らずのうのうとアメリカに行っていた自分が情けない。茜音を苦しめ続けていた自らの不甲斐なさも。

今度こそ俺が守らなくては。

斗碧に【今夜茜音を貸してほしい】とメッセージを打ち送信する。

茜音のことも、晴馬のことも。すべてにケリをつけて、今度こそ家族になろうと決意を固めた。


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