愛しい君のわがままを
舞い散る桜の花びらの中。
彼女と歩く通学路。

引退した後も後輩の指導だなんだと学生生活部活に明け暮れていた俺は、この道を彼女と歩いたのは数えるほどしかない。

そんなことを今更後悔しても遅いけど、こんなにも嬉しそうな彼女の顔が見られるなら、もっと一緒に帰っておけばよかった。


「ごめんな……」


思わず漏れた呟きに、彼女がふわりと笑って。


「まだまだ、これからです。」


何に対しての謝罪かなんて分かっていないはずなのに、察しのいい彼女の言葉が胸に甘く響く。
たったそれだけで、色鮮やかに魅せられたこれから先に、鼻の奥がつんとした。

手を繋いで帰れるの嬉しい、と笑う彼女の手を持ち上げて、その甲に、ちゅ、と唇を落とす。


「?!」

「俺、やっぱお前のこと、すげぇ好き」


愛らしく頬を染める彼女と。
これから先もずっと。



3月某日、卒業式。
君の愛しいわがままを聞いた、



特別な日――…。




fin.
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