帝王と私~Darkness~
「んぁ……」
貴将はいつの間にか眠っていた。

スマホを見ると、16時47分。
もうすぐ弥生の仕事が終わる時間だ。
「かなり寝てたんだな……俺」
迎えに行こうと思い立ち、クローゼットに向かった。

すると━━━
ブーッブーッブーッ……
弥生から電話がかかる。
「弥生?」
『あ、貴将さん。ごめんなさい、今日残業になっちゃって……少し帰るの、遅くなるの』
「そう…わかった。どのくらい?」
『んー。まだわからない。また帰る前に連絡するね』
「そっか。なるべく早く帰ってきてね。寂しいから」

『………』
「何?弥生?」
『ほんと今日の貴将さん、女の子みたい(笑)可愛い~』
「そうだね…迎えに行くから、必ず連絡して?」
『うん!わかった』

通話を切って、クローゼットに寄り掛かる。
「会いたい……早く…」

それから二時間後、再度弥生から連絡が入り、迎えに弥生の会社前に行った。
会社前に着き、車で待機する。
「岡埜。弥生が来たら、教えろ」
「かしこまりました。あ…」
「は?来た?」
「あ、いえ。今はまだ見ない方が………」
「は?なんだよ、それ?」

車のドアを開け、会社入口を見た。
「━━━━」
「━━あ、ありがとう!助かったぁ」
弥生が男性社員と仲良さそうに話をしていた。

嫉妬よりも重たい、醜い感情に包まれる貴将。
「じゃあ、お疲れ様!」
そう言って、こちら側を見た弥生。
貴将の存在に気づいた弥生は、
「貴将さん!」
と嬉しそうに、駆けてきた。

その姿を見るだけで、とてつもない狂喜で身体が震える、貴将だった。
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