研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
「なんですか、それ」

教授が立ち上がって机に向かった。
そこで手に取ったのは、1月に提出した私たちの論文だ。

「すごくいいバランスで書かれていたよ」

そう言って私を見て笑う。

「森里さんの丁寧な文章は、林くんだけじゃなく、僕も一目置いている」

教授はゆっくりとソファーに向かってきた。

そして静かに腰を落とす。

「僕はまた森里さんの書いた新しい論文が読みたい」

教授の、私の心を確かに揺さぶる一言。
空っぽになっていた私の心に小さな芽が頭を出そうとしている。

「テーマはゆっくり、たくさん悩んで決めていきましょう」

教授の言葉に私は静かに頷いた。

穏やかな衝撃を受けた春の一日。

私はもう少し迷い続けることになる。
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