研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
誰もいない研究室に二人。

私はただ、進まなくて居残り。
理仁は、止まらなくて居残り。

「理仁、帰るよ、私」

そう声を掛けた時、やっと理仁がパソコンから目を離した。

「あれっ」

あたりを見回す。

「みんな、もう帰ったの?」
「帰ったよ」

夢中になり過ぎて気付かなかったようだ。

「なんだ、俺も帰る」

理仁がパソコンを閉じ始める。

「背中いてえ」

立ち上がってストレッチをすると、ボキボキッとどこからか音がした。

「すーごい音したね」
「バッキバキだよ、体」

そう笑う目と目が合う。

「ちょっと肩揉んでよ」

理仁が椅子にまた座る。

「えー」と言いながら、理仁の硬く凝り固まった肩を揉む。

「いたい」
「凝ってるからでしょ?」

肩を揉みながら、ふと優那が言ってたことを思い出す。

「付き合ってみない?」って簡単に言えたらいいのに。

私たちならきっと上手くいくよ、ってスムーズに言えたらいいのに。

スムーズに言える人生なら、25年間、何もなく過ぎるわけもなく。

「肩が硬過ぎて手が疲れた」と言って肩から手を離す。

すると理仁がくるーんと椅子を回して私の方を向いた。
「交代」と言って、私の肩を押す。
私の椅子が180度回る。

理仁が肩を揉んでくれる。
けど、すっごく痛い。

「いったー」

そう言って胸の高鳴りが伝わらないように誤魔化す。

私たち、これって上手く行ってないかな。

明日の学祭、いい感じにならないかな。
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