研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
微糖のコーヒーを飲んで少し休んでいると、やっと少しはマシになった理仁が現れた。

「やべーヒゲ剃ってない」

そう言って自分の顎を触ってる。

「理仁ってヒゲ剃ってんだ?」
「剃ってるよ」

当たり前じゃん、みたいな顔。
ヒゲなんて生えない人間だと思ってた。

「剃っておいでよ」
「ごめんなさーい」

抜けたような声をしながら今度は洗面所に消えた。

この人、研究室にいる時と全然違う。

ヒゲ剃りを待ってる間、暇で学祭のことを調べる。

「今日11時半からあいはらまさのぶのステージだって!」
「誰だよ、そいつ」
「えー、知らないの、ピン芸人だよ」
「知らなーい」

やっぱりテレビとか見ないから芸能人にはすごく疎い。

「ギャラいくらなんだろ。もっといい芸能人呼べないのかなー」

そんな事を言ってると、ツルピカになったいつもの理仁が登場した。

台所のシンクを見て「皿洗ってないじゃん」と言う。

「ミジンコ飼ってそうだからやだ」
「いねーよ」

理仁が笑う。

ああ、好き。

ねえ、今日はスカートなの気付いてるかな。
髪も巻いたの。

今日の私、全然違うの。

そんな私の想いをよそに、やっと理仁が「じゃあ、行きますか」と言った。
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