研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
常に一般開放されてる記念館のホール。

少し離れた場所にあるからか、学祭の今日も、いつもと変わらない顔をしていた。

ガラス張りのロビーに並べられたテーブルで休む。

「勝田エリー、キレイだったね」

自動販売機で買った紅茶を飲みながら言う。

「キレイだったね」

理仁は葡萄ソーダ。

ただ私の言葉を返しただけなのか、本当にキレイだと思ったのか、その声からは読み取れない。

「理仁ってどういう人好きなの」

そう言ってから、心の中で「アインシュタインとファーブル以外」と続けた。

「好きになった人が好きなんじゃない」

素っ気ない理仁の声。

具体的に言ってよ。

一口葡萄ソーダ飲んでから、続けた。

「ちゃんと、頑張ってる人がいい」

ここに、勝田エリーと私、女二人。
天秤にかけたとして、頑張ってるのはどっちなんだろう。

カタンと天秤がバランスを崩す。

勝田エリーの方が圧倒的勝利のような気がする。

「そろそろ帰る?」

理仁が飲み干した紙コップをトンとテーブルに置いて言った。

「うん、家帰って昨日の続きやる」

私もそう答える。

地味だし、ステージなんかには立たないし、ドレスも着ないけど、私が頑張れるのはこの世界だけだ。

「やるかー」

理仁もそう言って立ち上がる。

「はい」と言って、私の飲んだ紙コップも回収してくれる。

私たちは16時半、学祭を後にした。
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