研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
「うちの職場の独身、誰か紹介しようか」

「紹介」という言葉に私は反射的に首を横に振っていた。

「いやいや、そういうの、いい、いらない」
「なんで」
「何話したらいいか分からないし、優那にも気を使わせちゃうし」

今まで優那を通じて3回紹介されたことがあるけど、全て上手くいかなかった。

優那の紹介してくれる人はいつもイケメンで爽やかで、話してると緊張して全然楽しめない。
ああいうタイプにも優那は物怖じせず話せるのが羨ましい。

いつも一度会うと連絡が途切れてしまう。
向こうも優那みたいな子を想像してるのかもしれない。

いつも申し訳なくなる。

「ええー、だって20代がミジンコで終わるよ?」

優那は納得のいかない顔をする。
理仁の顔を思い浮かべた。

ミジンコが孵化した時の嬉しそうな顔。
受精させる時の真剣な表情。

いつの、どの顔も、私の好きな顔だった。
ミジンコを研究してる時はいつもいい顔をしてる。

「いいんだよ、ミジンコで」

そう言って、ただただ辛いだけのサラダを食べた。
口中がチリソースの甘酸っぱい辛さでヒリヒリする。

異国の香りがふんわりと漂ってきそうなビールを流し込み、辛さを誤魔化した。

そして考える。
私は何歳までこの不毛な恋をし続けるのだろう。

優那の言う通り、新しい出会いを探してみた方がいいのかもしれない。
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