身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 ぴょんぴょんは、冬真のお気に入りのぬいぐるみだ。

 二歳の誕生日のお祝いに私の両親がプレゼントをしてくれたときから、おもちゃで遊ぶときも、ご飯をたべるときも、眠るときも、冬真はいつもぴょんぴょんと一緒。冬真が言うにはぴょんぴょんは〝大切なお友達〟なのだそうだ。

「冬真、お手て自分で洗えるかな」
「できるよ」
「じゃあ洗って。あっ、ぴょんぴょんは置いてくるんだよ。この前みたいに持ってきたらお水でびしょびしょになって、夜は一緒に眠れないよ」
「うん、わかった。ぴょんぴょん待っててね」

 ぴょんぴょんをそっとソファに置いてから、冬真が洗面台に歩いていく。踏み台に上ると、石鹸をつけてきちんと自分で手を洗う。

「冬真、お熱測りたいから、お手て洗ったらこっちに来て」
「うん」

 しっかりとタオルで手をふいて、冬真がリビングに戻ってくる。

「ぴょんぴょんのお隣に座ってください」
「はーい」

 ソファにちょこんと座った冬真の熱を測ると、三十八度二分。まだ少し高い。けれど、本人はわりと元気そうだ。

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