愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
日下さんとの距離が近く、鼓動がどんどん早くなるのがわかった。

「俺のこと知ってどうするの?」

「えっと、あの、それは……」

しどろもどろ答えに困ったその時、

『ぐぎゅるるる~~』

私のお腹が盛大に鳴って、恥ずかしさのあまり一気に顔が真っ赤になった。日下さんはふっと表情を緩めると言う。

「芽生、お腹空いたの?」

「あー、えっと、残業で鬼のように仕事してたのでご飯を食べる暇がなかったというかなんというか」

「何か食べに行こうか?」

「い、いえいえ、帰ります。もう遅いですし。日下さんも帰った方がいいでしょう?」

「俺も夕飯食べてないから、一緒に食べよう」

「でも……」

口ごもると、日下さんは不思議そうな顔をした。

「でも、何?」

「えっと、ご家族は……大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

事もなげに言うので、私は日下さんの左手の薬指を確認する。そこにはしっかりと指輪がはまっていて、見た瞬間に胸が締め付けられた。
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