内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 三人で会うために大雅が天沢ホテルを使うようになったこともどこからか聞きつけたようだ。
『我が社の社員はお客様の情報は漏らしたりはしませんが、念のため副社長の部屋を担当する者は固定にしておきます』と言われたのは記憶に新しい。
 まったく、スパイみたいな奴だと大雅は思う。
 でもそのずば抜けて優秀なノンフレームの眼鏡を見るうちに、あることが頭に浮かんだ。
 ……彼に調べてもらえばいいのでは?
 優秀な彼なら、祐奈が抱えているものの正体を突き止めるくらいわけないだろう。
 なんとなくだが祐奈は大雅が天沢ホテルの人間であることにこだわっているように思う。
 それを足がかりにすれば……。
 でもそこまで考えて、大雅はダメだと思い直した。祐奈の苦悩を、彼女以外から聞いたとして、それはなんの意味もなさない。
 大雅の勘が正しければ、彼女は今なにかを乗り越えようとしている。
 愛してる、君だけだ、という大雅の言葉に、彼女が見せた燃えるような瞳。
 待っていてくれるかという縋るような言葉。
 自分はその彼女をそばで見守り続け、そしていつか彼女が出した答えを受け止めるだけだ。
 それがきっとふたりの真実なのだから。
「まぁとにかくそれまでは、週に一度の副社長のお休みをしっかり確保することに全力を注がせていただきます」
 ニヤリと笑って、嫌味とも取れる言葉を口にして、山城は部屋を出て行った。
 パタンとしまったドアを見つめて、大雅は小さくため息をついた。
< 84 / 163 >

この作品をシェア

pagetop