37℃のグラビティ
着陸した飛行機のタラップを降りると、アタシの暮らす都会(まち)とは違う色の空が一面に広がって、瞳いっぱい飛び込んで来た。


思いっきり伸びをして深呼吸をする。


「彩人。一緒に海で泳ごうぜ!」


ねだる様に新海の腕を掴みながら、朋希が言った。


「ちょっと、朋希。『彩人』じゃなくて『彩人くん』でしょ!?」


アタシは思わず、礼儀知らずの弟に、姉らしく喝を入れると、新海は朋希に耳打ちをし、それをニヤニヤ笑いながら聞き終えた朋希が言う。


「じゃあ、柚だって『新海』じゃなくて、『新海くん』だろ!?」


入れ知恵をした新海を睨む様に見ると、新海はアタシから白々しく視線を逸らした。


「俺が『彩人でいい』って言ったんだよ。な? 朋希」


新海は朋希の頭をわしゃわしゃと撫でて、朋希はそんな新海にすっかりなついている。


なんなの!? この男どもの一体感は!!


「あっそ」


「あれ? ヤキモチ?」


プイッとムクレたアタシに、新海が追い打ちをかける。


「誰が!!」


ムキになって言い返し、ひとりスタスタと歩き出したアタシの後ろで、新海と朋希の笑い声が聞こえた。
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