37℃のグラビティ
教室に入ったアタシは、何気なく視線を泳がせて、新海の姿を探した。


その視界に新海がいない事に、何故だか少しホッとして、席に着いたのもつかの間、


「あ、新海くん、おはよう」


クラスの女子の声に、自分でも驚くほど心臓がビクンと跳ねあがる。


振り返りたい衝動にかられながらも、振り返る事が出来なくて、挙動不審気味なアタシに気付いた明日香が訊いた。


「柚、どしたの?」


「え?」


「らしくもなくきょどったりしてさ?」


「あぁ……夏休みの課題、家に置きっぱなしにしてきたかもって思ったけど、あった」


アタシはわざと鞄を覗き込む仕草をして、それを誤魔化すと苦笑いした。


「柚が忘れ物とかする方が珍しいって」


言って無邪気に笑った明日香に、ちょっぴり胸が痛んだけれど、それを今は、どうする事も出来ないアタシだった。
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